「出発&到着」
6月23日。
前日に高校の友人たちと日本での最後の晩餐になぜかインド料理屋へ行き、そしてなんだかんだでタイミングが悪く結局誰もいなかった実家を後にしながら思った。「本当にこれから駐在行くのかな・・・?と。」
まったく実感のないまま関西国際空港へ。
なんだかふわふわした気持ちのまま第一の関門、「チェックイン」がやってくる。
なぜこの他愛もないフェーズが関門なのか。それは僕がビザを取得しておらず、かつ日本のパスポートでチケットを取ったからである。
一応整理すると、僕は日本出国時には日本のパスポートで出国し、アメリカ入国時にはアメリカのパスポートで入国するようにアメリカ大使館で言われた為、このような方法で入国、滞在をすることとなった。でもこれって非常に釈然としないんですよね。なんか釈然としないですよね?
「すいません、ビザ等は取得されていますか?」という質問からややこしいことを言われる気がしてならない。そんなことを考えつつ、チェックインカウンターを訪れた。
パスポートをチェックしつつ、すかさず「すいません、ビザ等は取得されていますか?」と言われる。
うわ、きてしまったああああ。でも僕は毅然と「あ、あ、あの!え、永住権持ってるんです。こ、これ、パスポートです!」と言いました。
ちゃんと言えたかな?
僕のアメリカパスポートを見ながらなぜか「ふっ」と一瞬鼻で笑われて「はい、大丈夫です。」と言われ第一関門突破。
何がおかしいねん!!
釈然としないまま第二の関門「出国審査」へ。
ここでもどうせ「すいません、ビザ等は取得されていますか?」って言われるだろうなぁ・・・と思いながら出国審査開始。
「はい、結構ですお通りください」
「あ、違うんですよ~米国の永住権持ってまして~ほらここにぱすp・・・え?」
まさかのスルー。
もうすごいめんどくさいごたごたに巻き込まれるだろうなぁと覚悟していたので、かなり早めに行ったのですが、裏目に出て何とも言えないラウンジでひたすら時間をつぶしていました。
ここから飛行機に乗るわけですが、ここでは特に事件はなく、しいて言うなら何かターバン巻いた人が客室乗務員と何やら揉めていたっぽい事と、2015年のM-1の動画が見れたので見ていたのですが、やっぱりタイムマシーン3号のネタが一番面白かったんじゃないかって思ったくらいでした。
10時間半後、無事にロスにつきまして、ここで最後の難関、「入国審査」が待ち受けていました。
最悪ココで強制帰還もあるなって覚悟していました。もうそうなったら帰りの便は下町ロケット全話見てやろうって。
僕はアメリカ人なので、アメリカ人のレーンでスムーズに入国審査が始まりました。対戦相手は素手で戦ったら僕はまず3秒でミンチにされるであろう屈強そうな黒人のおっちゃん。
おっちゃん「Where did you come from?」
ふっ、愚問だな
僕「Japan」
おっちゃん「OK.」
余裕やな。
おっちゃん「How long have you stayed in Japan?」
・・・え、どんくらい?去年アメリカ行ったけど完全に日本人として行っていたけど、アメリカ人としてってことか?となると・・・
僕「Thirteen? No… Fourteen ? No… mmmm…. A long time !」
まぁ、17年だったんですけどね。
おっちゃん「Business?」
いや、子どもの頃からだから・・・うーーんと・・・
僕「Yes, business」
嘘はついてないからね。
おっちゃん「Teaching English ?」
いや、車会社だから・・・
僕「Sort of !」
中高の時、期末試験前とか結構教えてたし。
おっちゃん「OK Welcome back to the United States.」
うおおおおおおおおおお!!めっちゃ違和感ある!!!
おかえりなさいってもう17年間帰ってないんですけど。家出にしてもかなりやりすぎですよ。僕のこの17年間だってそりゃあね、それなりのドラマがありますよ。
17年前の僕は言ってしまえば日本という異国で暮らし始めたわけですからね。そりゃあもう苦労の連続で、初めて日本の小学校の掃除時間の同級生たちの雑巾がけを目にしたときは「うわ、奴隷かよ・・・」って思いましたし、給食当番で牛乳を持って来たり、スープをよそったりしている同級生を見て「うわ、奴隷かよ・・・」って思ったもんですよ。
それがですよ?もう十数年後には、お店でいの一番に雑草抜きをして「店長!雑草全部抜いてきました!」ともう社畜という名の会社の奴隷をやっているんです。それくらいこの17年というのは重いはずなんです。
それをおかえりなさいの一言で済ますとはどういうことじゃ!!!
とは全然思わず、「Thank you」と颯爽と入国審査を終えました。
全ての懸念事項が解決し、「やったあああああ!」という気持ちを胸にタクシーに乗り込み、会社横のホテルに到着し、「やったああああ!」とベッドにルパンダイブを決め込み、足をバタバタさせながら脱力していました。
ハイジの小屋のシーツってこんな感じなのかな?とか思っていたのですが、ふと、「ついたら電話してください」という駐在員の先輩の言葉を思い出し、脱力しながらも手だけ電話機に伸ばし、電話を掛けました。
僕「もひもひー、ぶじにほてるにつきましたぁー」
先輩「あー、そう?じゃああと5分後迎えに行くけど大丈夫?」
!?!?!?!?
しゅ、しゅ、しゅ、出勤!?まだロスについて1時間もたってないのに!?
おいおい、先輩ここは自由の国アメリカだぜ?俺は自由にさせてもらうぜ・・・?
そう、初めが肝心。始めにガツンと言っておかないと。そう思いながら僕はすぐさまこう答えました。
僕「すいません、あと10分だけください!!」
17年という月日は重すぎた。