しがない駐在員の日報(LA編)

駐在員とはなんたるかを綴ったドキュメンタリー的なブログです。

カジノの本当の楽しみ方

先日ボートメーカーのイベントに出席していた際の話です。

 

 

このボートメーカーというのが何を隠そう僕が2週間工場で働いていたあのボートメーカーなんですね。

 

 

そこのボートメーカーのイベントともなると僕もそれなりに張り切るわけで、イベント最終日にボートメーカーの社長とか販売店の人とかと遅くまで飲んでたんですよ。

 

 

そしたら社長がいうんですよね、「おし、野郎ども!このままカジノへ行くぞ!!」ってね。

 

 

アメリカでは州によってカジノが合法か、違法かそれぞれ決まっていて、カジノ自体はざっくりいうと二パターンあります。

 

 

一つはイタリア系マフィアがかつて牛耳っていたところ(ラスベガスとか)。もう一つは昔インディアンの土地を奪ったことに対して賠償をする目的でインディアンの人たちにカジノの利権を与えたことをルーツとするところ(この時いたオクラホマとか)があるらしいのですが、今回はこのインディアン系のカジノに行きました。なので完全合法です。一応ね。

 

 

 

僕はアメリカに来てから何度かカジノに足を運んだことがあるのですが、ラスベガスみたいなところとオクラホマみたいなところでは大きく違うところがあるんですね。

 

 

 

それはズバリ客層。

 

 

 

ラスベガスは言っても観光地。観光客が基本的には優雅にカジノを楽しんでいるわけですね。皆余裕があるわけですよ。

 

 

 

一方のオクラホマのような言い方はあまり良くはないですが、ちょっと辺鄙なところにあるカジノは結構地元民とかが通ってまして、まぁ、人によりけりではあるのですが、必死な人もいるわけです。僕も何度か泣き崩れる人とかを見ました。

 

 

今宵は一体誰が泣くことになるのか・・・。ドキドキしながらカジノフロアに入室しました。

 

 

 

入るや否や、まずはルーレットが僕らを出迎えます。

 

 

社長「マイケル。お前今いくらある?」

 

 

 

ポケットを確認した僕はすぐ返します。

 

 

 

僕「11ドルです!」

 

 

 

社長「馬鹿野郎!!!お前カジノをなめているのか!!」

 

 

 

いや、もう何って現金社会じゃないし・・・。とか思っていると、社長がポケットからさっと100ドル札を取り出し、ルーレットにバンと置きます。

 

 

 

社長「マイケル。黒か赤かどっちだ。お前が言ったほうに全額賭ける。外したらお前のところからは一切商品を買わん。さぁ、選べ。」

 

 

 

入室してわずか1分。早速僕が泣き崩れそうになった。

 

 

 

しかし、泣き崩れる暇もない。

 

 

早くどちらか選ばなければならない。

 

 

 

ぱっとルーレットの結果を示す電光掲示板を見る。直前10回回したうち、8回が赤、2回が黒に止まったのが分かる。そして確率というのは収束されていく・・・。

 

 

 

か細い糸のような理論。しかし、この理論に頼るほかなかった。

 

 

 

僕「BLACK!!!」

 

 

 

100ドル札は紙切れのようにぞんざいに黒のマスにおかれた。

 

 

 

文字通り手に汗握らせ、ディーラーがルーレットを回すのを見守った。

 

 

コロコロコロコロ・・・コトン。

 

 

 

黒のマスに玉は落ちた。

 

 

 

社長「…BLACK!!! やったぞ、マイケル!!」

 

 

 

神は僕に味方をした。なぜ初っ端からこんな精神をすり減らさなければならないのか・・・ほっと胸をなでおろしたのもつかの間、社長が僕にこう告げる。

 

 

 

社長「マイケル、次は奇数と偶数どっちだ。外したらやはりお前のところからは商品を買わない。」

 

 

 

まるでジェットコースター。またしてもピンチである。

 

 

 

頼るものはやり電光掲示板しかないのか・・・。だが、今回は奇数と偶数がほぼ同じ割合となっている。

 

 

 

どうすればよいのか・・・。

 

 

 

そのとき、マイケルに電流が走る。

 クリックすると新しいウィンドウで開きます

 

 

いや、待て・・・!落ち着け・・・!ある・・・!またしてもロジックが・・・!

 

 

 

わずかだが、偶数の方が確率が高いはず・・・。なぜならルーレットには「0」があるから・・・!

 

 

 

僕「Even!!!」

 

 

 

僕は自分の立てたロジックに従い、200ドルを偶数のマスに動かした。

 

 

 

ディーラーが静かにルーレットを回す。

 

 

 

人生で一番大きなギャンブル。僕はただただ見守った。

 

 

 

ディーラー「0!」

 

 

 

僕「よっしゃああああああああああああああ!!」

 

 

 

まさに狙い通り。

 

 

 

僕は笑顔で400ドルを受け取ろうとした。

 

 

 

が、400ドルどころか、賭けていた200ドルをディーラーが回収していた。

 

 

 

僕「え、なんで・・・?」

 

 

 

ディーラー「いや、0は偶数じゃないんで」

 

 

僕は激怒した。

 

 

 

僕「いや、なんでやねん!!!!0は偶数やろうが!!0は2で割り切れるやろうが!!!!2nのnに0代入してみろ、0やろうがい!!!!なんでそんな事もわからんねん!!!!!」

 

 

 

???「お客様。」

 

 

 

僕「なんや!?こっちは今話s・・・」

 

 

 

「他のお客様のご迷惑になりますので、その辺で。」

 

 

 

めっちゃ屈強な男だった。

 

 

 

 

僕「おうふ・・・」

 

 

 

僕は泣く泣く引き下がった。

 

 

 

これが僕のお金ならまだしも、大事な取引先の社長のお金。僕は恐る恐る社長の方に顔を向け、「す、すいませんでした!!」と頭を下げた。

 

 

 

が、この後の社長の反応が僕の予想するものとは全く違っていた。

 

 

 

社長「・・・いや!今のはナイスだマイケル。行けるかもしれない・・・!マイケル、次に行くぞ!!」

 

 

 

????

 

 

 

良く分からないまま、次のテーブルへ向かった。

 

 

 

次のテーブルはブラックジャック

 

 

客同士ではなく、客VS.ディーラーの構図になるので、お客さん同士で盛り上がれるゲームである。

 

 

 

僕らは一つ空いていたテーブルに腰を掛け、身内で固めた。

 

 

 

一体社長は何をしようとしているのか。

 

 

ディーラーがゲームの準備をしているとき、社長はディーラーにこう問いかけた。

 

 

社長「今このテーブルには何台のカメラがついている?」

 

 

なるほど、イカサマ防止で各テーブルにカメラがあり、常に監視しているらしい。

 

 

ディーラー「えー、このテーブルだと12台ですね。」

 

 

そ、そんなあるの?と僕が驚いていると、社長は僕にこう語りかけた。

 

 

社長「マイケル。さっきのルーレットで俺たちに多少注目が集まっている。これが何を意味するか分かるか?」

 

 

 

僕「要注意人物扱いされているとかですか?」

 

 

 

社長「そうだ。だから今からこのカジノにあるカメラを犯罪を犯すことなく、すべて俺たちに向けさせる!!!」

 

 

 

僕「なるほ・・・え?いや、社長・・・それに一体なんの意味が・・・」

 

 

 

社長「おし、お前ら行くぞ!!!!!」

 

 

 

うん、あれだな。酔っ払いなんだな。

 

 

 

ここから社長とカジノ側との激しい攻防が始まる。

 

 

 

1ターン目。それぞれ皆掛け金をテーブルに置き、1枚目のカードが配られる。

 

 

と、同時に絵札を配られた社長が動く。

 

 

社長「俺はここで10ドルレイズする!!!」

 

 

ディーラー「お客様!!このタイミングでベットを増やすことはできません!!」

 

 

社長「なに!?なんでだ!」

 

 

ディーラー「そういう、ルールですので!」

 

 

社長「お前・・・!名前はなんだ?」

 

 

アマンダ「アマンダです・・・」

 

 

社長「アマンダ!フロアマネージャーを呼んで来い!」

 

 

アマンダはフロアの奥のほうにいるフロアマネージャーらしき人に合図を送るとすぐさまその人がテーブルにやってくる。

 

 

フロアマネージャー「どうかされました?」

 

 

社長「アマンダがベットを増やしてくれないんだ!」

 

 

フロアマネージャー「いや、そういうルールですので・・・」

 

 

社長「何!?・・・そうか。分かった。お前に・・・お前の名前は何だ?」

 

 

クリス「クリスです。」

 

 

社長「クリス!クリスに免じてここは引き下がろう!行ってくれ」

 

 

クリス「はい。」

 

 

ゲーム再開。

 

 

このターン、ディーラーがバーストし、テーブルの皆が勝利する。

 

 

皆「WHOOOOOOOOOOOOOOOO!!」

 

 

ハイテンション。夜中の1時を過ぎているのに皆元気である。

 

 

社長「アマンダ、サンキュ」

 

 

そう言いながら社長は拳をちょこんと前に差し出した。あのスポーツ漫画とかである、あのチームメイト同士で拳を軽くコツンとするやつ。

 

 

ところがアマンダは困った顔でこちらを見てくる。

 

 

アマンダ「すみません、お客様に直接触ることは許されていないのです・・・。」

 

 

社長「何!?おい、クリス!クリスはどこだ!?」

 

 

すぐに駆け寄ってくるクリス。

 

 

クリス「はい、なんでしょう?」

 

 

社長「アマンダは俺の手を触れないのか?」

 

 

クリス「そうですね、そういう決まりですね。」

 

 

社長「俺はただただ、アマンダと喜びを分かち合いたいだけなんだ!!ダメなのか!?」

 

 

クリス「んーダメですね。すいません。」

 

 

社長「そうか・・・もう行っていいぞ。」

 

 

その後のゲームでも社長は、

 

 

 

社長「この50ドルは俺の分、そしてこっちの50ドルはクリスの分だ!クリスにはお世話になっているからな」

 

 

 

クリス「それはできません。」

 

 

 

社長「俺はカウンティング(ブラックジャックのイカサマ方法の一つ)してるぞ~、どうだクリス!」

 

 

 

クリス「もしされていても大負けしているので問題ございません。」

 

 

 

など、お金をすり減らしながらカジノ側と激しい攻防を繰り広げた。

 

 

 

僕はというと、お金(社長のお金)をちょこっとずつ増やしていた。

 

 

 

ギャンブル開始から2時間。ついに社長のお金が尽きる。

 

 

 

社長は僕のお金(本来社長の)を全額受け取り、全額ベットした。だいたい200ドル弱。

 

 

 

社長「これはアマンダの分、クリスの分、そして俺たちみんなの分だ!!!」

 

 

 

クリス「はい、あなた個人の分として受け付けますねー」

 

 

 

そして淡々とゲームは進み、淡々と社長に弱いカードがわたり、淡々と負けた。

 

 

 

社長「くぅうううう・・・クリス、最後に・・・最後に教えてくれ。今、このテーブルにカメラは何台向いている・・・?」

 

 

 

クリス「んー・・・15台ですね。」

 

 

 

社長「プラス3台か・・・まぁ、上々だな・・・おし、野郎ども帰るぞ!!」

 

 

 

こうしてギャンブルという名の熱を強く帯びた夜は終わりを告げた。

 

 

 

検証結果:お金を500ドルくらい使って、2時間やりたい放題やれば3台の防犯カメラが追加される。

 

 

 

真のお金持ちはこうやって楽しむらしい。