汗と涙とファイバーグラスの工場編パート2
前回までのあらすじ。
ファイバーグラス超痛え。
二日目:
工場員の朝は早い。
午前5時に起床。たかが2時間の時差。されど2時間の時差。実質午前3時に起きたことになる。
つ、つらい。
工場は朝の6時からスタートする。これは日の出る前に乾かさなければならない作業を済ませてしまうためである。
現代っ子の僕にはなんともつらいスケジュールである。
適当に朝ご飯をつまみ、作業服に着替え工場へと車で向かった。
工場独特のなんとも言えぬ匂いに出迎えられつつ、僕は人事部のおばちゃんの元へ向かった。
僕 「おはようございます。本日はどちらの工程へ向かえば…?」
人事部 「今日もファイバーグラスを塗りたくって!」
…え?また?
どうやら今日は船の別のところを塗りたくるらしい。
なんだかなーと思いながらてくてくついていった。
人事部「 さぁ、着いたわ。今日はここで一日作業してもらいます。ここのチームリーダーを紹介するわね。ジョジョ!こっちきて、今日ここで一日働くマイケルよ!」
き、き、き、きたあああああああ!!
ついに!ついに憧れのジョジョに会うことができました!まさかオクラホマにいたとは…。
ジョナサン・ジョースターなのか。ジョセフ・ジョースターなのか。はたまた、逆に空条・ジョリーンなのか。わくわくしながらジョジョの登場を待った。
参考図:ジョナサン・ジョースター。ジョジョの奇妙な冒険第一部ファントムブラッドの主人公。
参考図:ジョセフ・ジョースター。ジョジョの奇妙な冒険第二部戦闘潮流の主人公
参考図:空条・ジョリーン。ジョジョの奇妙な冒険第六部ストーンオーシャンの主人公。
ジョジョ「お前がマイケルか!よろしくな!ペッ!おっとすまねえ!唾を吐くのは…そう、癖。癖なんだ。決して悪気があったわけじゃあないんだぜ。へへへ」
いや、もう何この人。ジョジョっていうかヨーヨーマッのスタンドですよね?
参考図:ヨーヨーマッ。ジョジョの奇妙な冒険第六部に登場する唾液を使って相手を攻撃する敵スタンド。
そんなジョジョ改めヨーヨーマッとその愉快な仲間たちと作業を進めていく。
このファイバーグラスを塗りたくるのも2日目。さすがに慣れてくるのかと思いきや、ここのチームは曲線や窪みがやたら多いところを担当しているみたいで難易度が格段に上がる。
絶対に作ってはいけないという空気のポケットを無尽蔵に生み出していく。
手も足も出ないままお昼休憩へ。
だ、だめだ・・・根本的にこの作業が向いていない・・・。しかも暑い・・・。眠い・・・。
???「大変なところに捕まっちまったなァ」
僕「こ、この声は!?」
ロビン「あそこは格段に難易度が跳ね上がる。俺は2時間で音を上げた。手をうまく使え。手は自由が利くからなァ。ファイバーグラスを恐れるな。俺はできないが、お前ならひょっとして・・・?」
そう言ってロビンはどこかに去って行った。
2時間は持たなすぎじゃあ・・・。
手がかゆくなるのでロビンのアドバイスは華麗に無視しつつ、作業に戻る。
〜終業間際〜
相変わらずなれない作業の最中にチームの一人が僕に話しかけてきた。
チームメイト「±Δ§Γ×?」
ん?
僕「ぱーどぅん?」
チームメイト「¶ζσρΔ?」
ん?
僕「ぱーどぅん?」
チームメイト「ЫШλφ!?」
いや、ちょっと語尾つよなってるやん。。もうね、薄々ですよ。薄々思ってたんですけどオクラホマ訛りの英語全然聞き取れない。僕本当にリスニングにだけは絶対的自信があって、まぁ、たいがいの訛りも20分すればもう慣れて完璧に聞き取れるんですね。
オクラホマの英語分からん。
全員じゃないんですけど、5人に1人くらいの割合で何言っているか全く分からない人がいるんです。(出身地によっても違うのでしょうか?)
この人も全く分からない人の一人なのです。
僕は意を決して言いました。
僕「プリーズ スピーク スローリー!」
屈辱のセリフ。僕はこの時生まれて初めてこのフレーズを使いました。
チームメイト「エ ク ス キュー ズ ミー!!」
いやいやいやいやいやいや。絶対すごい難しいこと言ってると思ったら!ま、まさかのエクスキューズミー!?
あまりのことに僕が呆然と立ち尽くしていると、
チームメイト「お前、本当に英語話せるのか?」(なぜかこれは一発で聞き取れる)
と屈辱の言葉を浴びせかけられます。
く、くそ・・・!こいつ!!と頭にきた僕は、
┐(。・∀・。)┌さぁ?
とジェスチャーで返しておきました。
こうして相変わらずうまくもならないまま、チームメイトともコミュニケーションが満足にとれないまま、2日目を終えました。
三日目:
相変わらず慣れない。今日もファイバーグラスまみれになります、か。と気合を入れて出勤する。
僕「今日はどこにファイバーグラスを塗ればいいのですか?」
人事「今日からもう塗らなくて大丈夫です、次のステップ、サンディングに行きましょう。」
ひゃっほーーーーーーーーう!おさらばだーーーーーい!
僕が心の中でガッツポーズをしている中ある不穏な声を聴きとってしまう。
「あいつ、気の毒に・・・」
え?
人事「じゃあこれをつけて」
スッと耳栓とデジモンの歴代主人公が付けているゴーグルみたいなのを渡される。
僕「こ、これは?」
人事「耳栓とゴーグルです。次の工程ではこれが必須なのでつけて作業してください。」
僕「わかりました」
人事「それではあそこの部屋が作業場です。私は入らないのでここでお別れです。頑張ってください」
嫌な予感がしつつも、耳栓とゴーグルを着用し、言われた作業場に入る。
チュイーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!
いや、もう早速うるせえ。このうるさいドリル音を掻き分け、リーダーらしき人に声をかける。
僕「あの、すいません、ここで今日働くマイケルです。」
リーダー「来たか!!俺の名h(チュイーーーーーーーーーーン)…っそくじゃあそこで作業を始めてくれ。」
いや、もう全然分からん。ほぼチュイーーーーーーーーーーンしか聞こえん。リーダー=チュイーン。作業=チュイーンですもん。
とりあえず渡された工具から察するに、ボートに目印を付けたところにホースやコード類を通すための穴をドリルで開けていくらしい。
僕は早速ドリル片手に作業を始めた。ボートにドリルを当てる。スイッチを入れる。手がはじかれる。
???
もう一度やってみる。
ボートにドリルを当てる。スイッチを入れる。手がはじかれる。
はいはいはい。ズバリあれね。力負けしてる、と。
いや、なんというかビビっている。ドリルというものにビビって逃げ腰になっている。穴を開けちゃいけないところに穴を開けたらどうしよう。そんな不安が僕を安定志向に走らせ、思い切った動きを取らせてくれない。
リーダー「おい、何してんだ!?とっとと穴を開けていけ!!!!」
僕「は、ははははい!!!!」
ガガガガ、チュイーーーーーーーーーーン!!
なんというか・・・ドリルって・・・勢いですね。
不安という感情を失った僕はドリルマシーンとして順調にドリルで穴を開けていく。
というかこんなにあけていいの?ダルメシアンの模様くらい穴をたくさん開けていく。
しばらく調子に乗って穴を開けていると、普段使わない筋肉が強張ったのか自分の動きが鈍くなっていくことに気が付いた。
ダメだ、このままでは手が死んでしまう。。
僕はゆーーーっくり作業ペースを緩めた。
するとチームリーダーが両手で何かを折るジェスチャーをしながらすごい勢いで僕のもとに向かってくる。
え、なに?ば、ばれた!?しかも何そのジェスチャー!?てめぇの体チューペットみたいに二つに折ってやろうかってこと!?
僕「すすすすす、すいませんでし…」
チームリーダー「新入り、ブレイク(休憩)タイムだ。」
え、なに?ブレイク(壊す)とブレイク(休憩)が掛かってるってこと?あ、焦ったー・・・。ここの作業場ではチュイーーーーンの音のせいでこういう風な合図でやり取りをしているらしい。
その他にも船をドンと叩いて相手にこっちを向かせる通称:船ドンなどが存在する。
休憩時間。
僕は休憩室で普段通り休憩を取っていたが、何やらいつもより視線を感じる。
なんでだろう?という疑問は彼が説明してくれた。
ロビン「マイケル、とんでもない所に飛ばされちまったなァ。お前がいるサンディングは暑い、耳に悪い、目に悪い、肺に悪い、作業がきついというこの工場誰しもが認める一番のハズレ工程だ。そこをやらせるとはお前の会社は正気じゃあない。見捨てられちまった可能性があるなァ…。悪いことは言わない。身支度の準備をしな。」
なるほど、通りで・・・。
会社に見捨てられたらしい僕だが、まぁ、帰るわけにもいかないので作業場へ戻った。
しかし、なんでしょうね。ドリルさばきはなんだかんだ結構上達して、スムーズに作業ができるようになりましてね。まぁ、昨日までのファイバーグラスよりは気持ち的にマシかな、って。
穴を開けなくていい所に何回か穴をあけた気もするけれど、ドリルさばきという謎のスキルを身につけ、3日目は無事に終わりましたとさ。
つづく。