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しがない駐在員の日報(LA編)

駐在員とはなんたるかを綴ったドキュメンタリー的なブログです。

「駐在員爆誕」

3月中旬。

 

僕はいつものように朝から自分のデスクで仕事をしていた。

 

海外の取引先相手に右手で器用にメールを打ちながら左手で綾鷹をSip。すれちがう女子社員と笑顔でChat。他部署からの怒りの電話に謝罪しつつ、電話越しに相手にBow。

 

そんな日常が水面下で崩壊しようとしていた。

 

課長「マイケルくん、ちょっといいかな?」

 

将棋や囲碁の名人は何千、何万通りという手が一瞬で浮かぶというが、僕も同様に「やばい、あの件か・・・?」とか、「いや、この件か・・・?」と一瞬でいくつもの悪手が頭をよぎった。

 

とりあえず頭をやや下げ気味で「はい、なんでしょう・・・?」と恐る恐る聞くと、「ちょっと会議室に行こうか」と言われ二人で会議室へと向かった。

 

相当でかい案件である。

 

胃をきりきりさせながら席に着くと課長の口から思わぬ一言が飛び出てきた。

 

「マイケル君、海外の半年研修には興味はないかね?」

 

半年研修とはうちの会社で行っている研修プログラムの一つで、海外の子会社に半年間研修という形で長期出張し、あらかじめ決めたテーマに沿って何かを学んで来たり調査したりするプログラムである。全員がいけるわけではなく、年に数人とかせいぜい十数人がいけるプログラムなのでかなり貴重な経験ができる。

 

僕は思った。

 

行きたくない、と。

 

いや、決して行きたくないわけではないが、もろもろの理由でこの時期には行きたくなかったのだ。

 

このプログラムはあくまで個人が手を挙げて参加するプログラムなので断ることもできる。しかし、ただただ断ると心象も良くない。そこで僕は課長にこう切り返した。

 

「いや~課長!半年じゃあ何も学べませんよ!」

 

神の一手である。やる気はあることをアピールしつつ、あくまで時間のせいにして断るという。心象を悪くすることなく、断る。この場では最善の一手であった。

 

すると課長も、

 

「そうだな・・・!いや、俺も実際そう思うよ!そうだな、うんうん。分かった、じゃあ仕事に戻るか!」とこの話し合いを切り上げた。

 

ふっ、我ながら完璧だぜ。

 

そんなこんなでまた日常へと我々は帰って行った。

 

~3時間後~

 

課長「マイケルくん、ちょっと会議室に来てくれるか」

 

マイケル「?はい、わかりました。」

 

なんだろう?お子さんの進路の相談とかかな?とか思いながら先ほどの会議室に行き、席に着いた。

 

 

 

課長「それじゃあマイケル君、ロサンゼルスに駐在に行ってもらうわ。」

 

・・・え?

 

課長「マイケル君の言うとおり半年じゃあ中途半端だと俺も思う。だから駐在ね。また詳しいことは追ってメールするわ、じゃあよろしく!」

 

こうして一人の駐在員がそのきったねえ産声を上げたのであった。