しがない駐在員の日報(LA編)

駐在員とはなんたるかを綴ったドキュメンタリー的なブログです。

マネージャーに求められるもの

突然ですけど、僕って実はアメリカではマネージャーって役職なんですよ。

 

 

マネージャーっていうのは日本で言うところのどの役職かっていうと、これは会社によっては課長であったり、部長であったりとバラバラなんですけど、うちの会社で言えば課長に恐らく相当します。

 

 

まぁ、皆さん薄々感づいているのでは無いかとは思うんですけどね。僕自身まだまだ課長の器ではないと思っています。

 

 

器で例えるなら、サラリーマンがふと「定年したら土いじりでもして、のんびり暮らしてぇなぁ…」って呟いたこのセリフ、それが僕です。まだまだ器を作り始めるのも先。そもそも本当に作るのか?それすら分からない。まぁ、そんな状況です。

 

 

実力が役職に追いついていない。いうなれば「こども店長」みたいな。そういう存在なんです。

 

 

なんでね、本当はこう色々とアメリカ人に対して指示とかしないといけない立場なのかもしれないですけど、まぁ、そんな偉そうなことはできない。相手もみんないい歳で、だいたい40-60くらい。軽く二回り以上違う訳です。キャリアが違う訳ですよ。

 

 

想像してみてください。加藤清史郎が木村拓哉に演技でダメ出しできるでしょうか?いや、できない(反語)

 

 

まず間違いなく偉そうにすると嫌われますよね。結果仕事全然うまくいかないですよね。でも時にガツンと言わないといけない。こうだよーって。

 

 

で、どうしようと悩んだ挙句、取ったのがコナン君方式。

 

 

「あれれー?おっかしいぞー?」ってね。おっちゃん気づけ…!!みたいな。

 

 

でもね、コナン君ならいいです。コナン君は常に的を得ているのでね。

 

 

僕なんて少年探偵団で言うところの元太なんで。最近リアルにうな重食べたいなって思ってるんで。

 

 

まぁ、事件が結果迷宮入りなんてザラですよ。

 

 

じゃあなんで僕みたいなヤツが課長クラスの役職につけるのか。

 

 

これはずばりVISAと関係しています。

 

 

アメリカで駐在するにあたって、就労VISAなるものが必要になります。

 

 

まぁ、就労VISAもいろいろあるみたいなんですけど、一般的な企業でアメリカに駐在する場合、「この人はこういう専門的なスキルを持っていて、アメリカの子会社にはそういったノウハウを持っている人がいない為、アメリカで働かせる必要があります」と申請するんですね。

 

 

 

要はこの人じゃなきゃダメなんです、みたいな事を言ってVISAを発行してもらうんです。

 

 

 

なので、必然的に役職が高くなっていき、結果として若い人でも高い地位に就くことが多いのです。

 

 

 

でもちょっと待ってください。あれれー?おっかしいぞー?

 

 

 

 

そう、思い出してください。

 

 

 

 

僕ってVISA発行してないんですよね。アメリカ人だから。

 

 

 

 

なので、当然高い役職に就く必要性もないのです。身分相応の「役職なし」でもいいんですよね。

 

 

 

あれれー?おっかしいぞー?と。悶々としてました。

 

 

でもそんな謎をずっと放置してたのです。元太だから。

 

 

まぁ、別になんでもいいかって。

 

 

だから悶々としてたのは最初の3時間くらいであとはずっと悶々としてませんでした。

 

 

 

 

そんなUn-Monmonとした日々を過ごす中、先週マネージャー職以上の人たち対象のハラスメント講習なるものを受けました。

 

 

 

カリフォルニアでは法律で2年に一回弁護士によるハラスメント講習なるものを受ける事を義務付けられており、やれこれを言うとアウト、やれあれを言うとアウトなど色々と教えてもらいました。

 

 

 

 

まぁ、結論から言うと「答えは沈黙」って言うね。もう何喋っても訴えようと思えば訴えれるとんでもない国なんだな、ここはって感じでした。

 

 

 

 

で、そんな弁護士の先生のお話で終業時間に関するお話がありました。

 

 

これも結構厳しくて、まぁ、残業したら残業代を払わなければならないのは勿論、お昼休憩も必ず決まった時間取らなければならなかったり、自宅にいるのに仕事のメールを送るのもアウト。出張中は厳しく実際の就労時間を計算してレポートを提出する必要があり、州によっては連勤日数の上限が有ったりと色々あるみたいなんです。

 

 

 

 

ほーん、結構厳しいなーと思いながら聞いてたんですよ。

 

 

 

 

そしたら弁護士の先生がこう言うんです。

 

 

 

 

弁護士「しかし、カリフォルニアは一つ特徴的な法律があって、この就業時間に関する規則。マネージャー以上、つまり管理職には一切適用されません。」

 

 

 

 

僕「!?」

 

 

 

 

 

弁護士「皆さんの場合は残業代の支払もありませんし、自宅に居ても仕事のメールをガンガン受け取って頂いて問題ありません。終業時間の規制も一切なく、極論365日24時間働き続ける事が可能です。過労死ライン等が存在する日本はとっても優しい国ですネ^^」

 

 

f:id:michaelalexander:20170314121442p:plain

 

 

 

 

アハ体験ですよね。色々と合点がいく。あー、だから僕ってマネージャーなんだな、って。

 

 

 

 

 

 

When you have eliminated the impossible, whatever remains, however improbable, must be the truth.

訳:「不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙なことであっても、それが真実となる」

 

                           ―シャーロック ホームズ―

 

VS. SUPER MODEL

近頃何かとコストカット、コストカットと言いますけどね。

 

やれエアコンの温度を28度にしろやらね、やれカラーコピー禁止にしろやらね。

 

言いますよね?

 

ぬるい。

 

 

もうね、ぬるい。

 

 

その程度のコストカットなんぞ生ぬるい。

 

 

え、うちの会社ですか?

 

 

うちの会社は、製品カタログを作るにあたってモデル代をけちる為に僕をモデルとして登用するという恐ろしい判断を下すくらい厳しい。

 

 

というわけで今回はモデルデビューを果たした時のお話です。

 

 

 

2月某日。

 

 

午前3時起床。

 

 

モデルの朝は早い。

 

 

っていうか早すぎる。

 

 

身支度をすぐに済ませ、すぐに港へと向かった。真っ暗闇の中港へ向かう姿はモデルというよりはエスポワール号へ向かうカイジに近かったと思う。

 

 

港へ着くと撮影スタッフの一部がすでに待機していた。

 

 

撮影するボートを確認し、乗り込む。

 

 

乗り込むや否や、スタッフからあるものを手渡される。

 

 

そう、洗剤である。

 

 

今回モデルとして参加する僕であったが、同時に雑用、清掃も担当していた。

 

 

ユーティリティープレーヤー。

 

 

僕の事をそう呼ぶ人は残念ながらいない。

 

 

せっせと作業を済ませ、出航時間の5時となった。

 

 

が、出発しない。

 

 

一体何待ちなのか。

 

 

スタッフに聞いてみた。

 

 

スタッフ「ああ、プロのモデル待ちだよ」

 

 

マジでか。普通にプロ呼んでるのか。

 

 

てっきり今回はアマチュアしかいないものだと思っていたところにまさかのプロ参入。

 

 

少し度肝を抜かれたと同時に怒りがふつふつと湧き上がる。

 

 

いや、はよ来いよ?

 

 

遅れる事30分。モデル(プロ)到着。

 

 

僕「おはようございます!本日は宜しくお願いいたします!」

 

 

相手がモデルのプロならこちらは営業のプロ。怒りを微塵も見せずしっかりとあいさつする。

 

 

モデル「・・・。」

 

 

まさかの無視。

 

 

そして悪びれる様子も一切なし。

 

 

険悪な状態のまま船を出発させた。

 

 

移動すること40分。あたりは一面海のところまでやってきた。ここからいよいよ撮影がスタートする。

 

 

今回はやや大きめのフィッシング艇の撮影で、「運転手のアメリカ人おじいちゃん(撮影スタッフ)、南米系のセクシーなお姉ちゃん(プロのモデル)、そして謎の怪しいアジア人の兄ちゃん(僕)が皆楽しそうにスピードを出しながら走行している」というシーンをヘリからの空撮でダイナミックな動画と写真を撮る。

 

 

いや、もうね。何そのシーン。

 

 

確かにアメリカはやれ人種のるつぼやら人種のサラダボウルやら言いますけどね。異物を混ぜすぎ。絶対家族じゃないし、じゃあ友達かっていうと年齢層全員バラバラ。かなり無理がある設定。

 

 

まぁ、でも我々がメインではないんでね。いいんですよ、これで。

 

 

そんなこんなでヘリも準備ができ撮影スタート。

 

 

皆まずそれぞれの定位置へ向かった。運転手は運転席へ。モデルは運転席の左横へ。そして僕は右横へ行き、そこで立ってスタンバイした。

 

 

撮影中は基本的に座った状態ではなく、立った状態で行う。

 

 

それぞれがスタンバイできたところでヘリから無線で連絡が来る。

 

ヘリの人「準備はオッケーか」

 

運転手「いつでもオッケーだ」

 

 ヘリの人「オッケー・・・レディ・・・アクション!!」

 

運転手「・・・よし、飛ばすぞ!振り落とされないようにな・・・!」

 

ブオオオオオォン!!調子よく回るエンジン。時速40キロ、60キロ、80キロ。スピードはどんどん加速していく。

 

 

 ここでね、ちょっとご存じでない人のためにね。一個解説。

 

船にシートベルトはない。

 

 

僕は普通に振り落とされそうになっていた。

 

 

僕「い、いかん・・・!三戦の構え!!!」 

 

 ちょっとご存じでない人のためにね。解説。

 

三戦の構えとは古くからある空手の型の一つで、船の上や足場の悪いところでの戦闘でも戦えるように編み出された型で、揺れにめっぽう強くなる。刃牙愚地独歩も使用していた由緒ある型である。

 

 

f:id:michaelalexander:20170305161401j:plain

愚地独歩の三戦の構え) 

 

 僕も「呼ッ」つってね、耐えてたんですよ。

 

そしたら無線で言われますわな。

 

ヘリの人「カーット!!」

 

ヘリの人「右側の人、へんな立ち方しないでください。」

 

まぁ、そうなりますわな。

 

撮影再開。

 

やはりフルスピードで船は走る。

 

どうしても耐えられない。僕は必死にシートにしがみつきなら耐えていた。

 

すると無情にもまた無線が鳴る。

 

ヘリの人「カーット!!」

 

ヘリの人「右側の人。笑顔じゃないですよ。笑ってください。」

 

いや、もうね。あんなきつい状態で笑えるの弱虫ペダルの小野田君ぐらいだと思うんですよ。どうしたってひきつってしまう。僕は残念ながら山王なんて異名は持っていない。とてもあんな状態では笑えない。

 

しかし、撮影はそのまま再開。

 

やはり当然のようにフルスピード。

 

僕はやはりシートにしがみつきながら、ひきつった笑顔で耐えていた。

 

しかし、ここで疑問が浮かんだ。

 

いや、あのモデルはどうやねん、と。

 

あんなプロ根性のない小娘がね、こんなハードな撮影をこなしているはずがない。

 

僕はひきつった笑顔のままふと左の方へと目をやった。

 

そこには凛とした姿勢で立っている女性がいた。

 

バ、バカな!!右手は自然とシートに添えてあり、必要以上に力を入れていない。当然三戦の構えもとっていない。いたって自然な立ち方。

 

表情はというともうそこはプロ。もう山王すぐそこにいましたわ。

 

しかも使っていない左手はなんかこうかっこよく髪をかきあげていたり、遠くの方を指さし、「あ、見て!あそこクジラが泳いでいるわ!」みたいなポージングを織り交ぜていく。

 

もうね、それでいったら僕はもう「あ、クジラ!」っていうのをこの20分ほどずっと無視してたわけですよ。かたやクルージングを楽しんでいる人、かたや必死に拷問に耐えている人みたいな。そんないびつな図になってたわけです。

 

そんな感じでスーパーモデルとの差を見せつけられ撮影は終了。

 

撮影スタッフやモデルさんに謝りつつ、僕のモデルデビューは幕を閉じた。

 

とりあえず写真等はもらっていないのですが、皆さんこれから船とかエンジンのカタログの写真を見るとき、足が八の字になっている人を探してください。

 

それ僕なんで。

 

 

 

 

 

 

 

 

汗と涙とファイバーグラスの工場編ファイナル

7日目:

 

 

 

重い腰を上げて今日も早朝から出勤。三日ぶりの工場の臭いはやはり臭かった。

 

 

 

 

僕「おはようございます。今日はどちらへ行けば?」

 

 

 

 

人事「今日、明日はアセンブリーに行ってもらいます。」

 

 

 

アセンブリーとは組み立て工程のこと。エンジンを取り付けたり、電子機器の取り付け、その他シートやハンドル、細かいクローム部品などとりあず付けれるもん全部つけていく。ここの工場ではアセンブリーも4つに分かれていて、今日に二つ、明日に二つ回るということらしい。

 

 

 

とりあえず一つ目の工程に向かう。

 

 

 

 

 

僕「マイケルです、よろしくお願いいたします。」

 

 

 

 

マイケル「僕もマイケルです、よろしくお願いします。」

 

 

 

 

ついに名前かぶりきてしまったーーーーー!ややこしい!

 

 

 

 

ただこのマイケル、僕とは容姿が当然異なっていて、例えるならばハリーポッターを細長く190センチくらいに成長させて、少し筋肉をつけ、ひげもじゃにさせたような見た目をしている。

 

 

 

うん、もはやハリーポッターとは別人である。

 

 

 

 

このハリー(改)と作業を進めていく。

 

 

 

 

ここでは船の外周に細かい部品を取り付けていくのと、コンソールボックスに穴を開けていくという作業をする。

 

 

 

 

 

 

生粋のドリラーの僕は当然穴あけを担当する。

 

 

 

 

なぜコンソールボックスに穴を開けていくかというと、後にこの穴に速度計や燃料計、ハンドルやシフトレバーを取り付けるからである。

 

 

 

 

このあたりになってくると、お客様の目に触れる部分が大半になってくるので失敗は許されなくなってくる。

 

 

 

僕が今まで開けてきたところは例えばタンクの穴であったり、ホースの穴など、修理とかで船をバラした時などよっぽどのことがない限り人の目に触れられないところで、そういうところは普段お客様も目にしない。ある程度はズレなどが容認される箇所なのだ。

 

 

 

 

そう、なのでここでは失敗は絶対に許されN…

 

 

 

 

チュイーーーーーーーーーーン、ガガガガガ…!

 

 

 

 

 

あ…。

 

 

 

 

 

 

数々の穴を開けてきた僕にはわかる。

 

 

 

 

これはね、全然違うところに傷がつきましたね、はい。

 

 

 

 

 

とんでもない量の冷汗が全身を伝う。

 

 

 

 

こんな時に魔法があればちょちょいのちょいなんですけどね、生憎と僕は生粋のマグル。

 

 

 

 

 

もう完全にお手上げである。

 

 

 

 

 

 

僕はハリー(改)に助けを求めた。

 

 

 

 

ハリー(改)「なるほど・・・。ちょっと実際に速度計をはめ込んでみよう。」

 

 

 

 

 

ハリー(改)は静かに速度計を手に取り、傷近くの穴にはめ込んだ。

 

 

 

 

ハリー(改)「…うん!ぎりぎり隠れるね!大丈夫だ」

 

 

 

 

 

グリフィンドオオオォォーーーール!!!!

 

 

 

 

どうやら、こういった計器類などは取り付け時に穴をふさぐためにある程度のマージンをとっていて、多少のズレは修正できるようになっているようだ。

 

 

 

 

 

ハリー(改)のお蔭で首の皮一枚繋がった。

 

 

 

 

 

その後は気を付けながら穴を開けていき、なんとかこの工程は無事に終了。昼休憩に入る。

 

 

 

 

 

 

ロビン「よぉ、マイケル。お前は今どこの工程にいるんだァ?」

 

 

 

 

僕「今はアセンブリーにいるよ」

 

 

 

 

 

ロビン「ア、アセンブリー!?あそこはエリート達が集う工程。俺たち有象無象と違い、スペシャリスト達が作業をしている・・・。お前もそこの仲間入りと言う訳か。マイケル!お前がどこまで上り詰めるのか…楽しみになってきたぜ。」

 

 

 

 

僕「おう!!(まぁ、ここでずっと働かないけどな)」

 

 

 

 

 

午後からは次の工程へ移動する。

 

 

 

ここでは速度計や燃料計などの電装機器の取り付けを行う。

 

 

 

 

作業場へ行くとなるほど確かにここの作業員の者と思われる何かの資格の認定証がいくつか飾ってある。あながちロビンの言ったことも間違いではなさそうだ。

 

 

 

 

 

さっそくチームリーダーに挨拶をしに行く。

 

 

 

 

僕「マイケルです、よろしくお願いいたします。」

 

 

 

 

チームリーダー「よろしく。ここでは二人の作業員の仕事を見ててもらう。実際の作業は資格がいるからな。おい、チャド!アントニー!来てくれ!」

 

 

 

 

 

 

え、

 

 

f:id:michaelalexander:20161213094628j:plain

 チャドと

 

 

  

 

 

f:id:michaelalexander:20161213094612j:plain

  

アントニーだって!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここからは特定の資格を有していないと作業できないようなので、主に作業を観察しながら分からないことがあれば質問していく。

 

 

 

チャドは電装関係、アントニーはエンジン回りの作業を行う。

 

 

 

しばらく質問しながら作業をしていくうちに雑談も交じってくる。

 

 

 

そんな中、チャドからこんな質問を受けた。

 

 

 

 

 

チャド「マイケル、お前KANJIは分かるか?もし、分かるんだったら俺の腕にあるタトゥーがなんて書いてあるのか教えてほしいんだ!掘ったときはウォーリアーみたいな意味合いだと説明を受けたんだけど・・・こいつだ。」

 

 

 

 

 

滝  祥   

 

 

 

 

 

 

まぁ、嫌な予感はしてましたよね。最悪の最悪「戦」とか「武」とかが入ってたらもう超甘々判定でウォーリアー認定しようと思ってたんですよ。最悪の最悪の最悪、もう多少のミスで「士」じゃなくて「土」でもまぁ、オッケーかなと。

 

 

 

 

滝  祥

 

 

 

 

たった2文字の漢字が無言のプレッシャーをかけてくる。なんというか、もはや「戦士に言葉は要らない、その態度で己を示せ」と言っているよう。

 

 

 

 

もうでもね、違うんですよね。例えば「戦士」が格闘タイプだとしたら明らかに「滝  祥」は水タイプですもんね。

 

 

 

 

カイリキーとゼニガメくらい違う訳ですよ。

 

 

 

 

僕はチャドに言った。「滝」はあの流れる滝であること。そして「祥」に至ってはもう意味も分からない、と。

 

 

 

 

チャドの眼からみるみると生気が消えていくのが分かった。

 

 

 

 

もやっとしたまま、その日の作業は終了した。

 

 

 

 

8日目、9日目は特にこれといったことはなく、同じようにアセンブリーの作業の見学に勤しむ。もやっとした感情を抱きながら。

 

 

 

 

10日目:

 

 

 

ボート工場も残り二日。佳境である。

 

 

 

午前中はボートの出荷前の清掃作業を行うことに。

 

 

 

ゴーストバスターのような重装備をしているおばちゃんの下で雑巾がけ等をこなしていく。

 

 

 

意外と最終工程でもファイバーグラスのカスやらなんやらが残っている。これらをきちんと手作業で清掃して初めてすべての工程が完了する。

 

 

 

自分も営業時代雑草抜きからキャリアをスタートさせたと言っても過言ではない。自然と力が入る。

 

 

 

しばらく下っ端根性を見せていると、社長が声をかけてくる。

 

 

 

社長「マイケル!休憩室に来てちょっと手伝いな!」

 

 

マイケル「はい!!!!!!」

 

 

下っ端の僕は元気いっぱいに返事をする。

 

 

 

マイケル「なんでしょう?」

 

 

社長「今日はあんたの送別会も兼ねたパーティだ。大量にピザを注文した。みんなに配るから手伝いな!」

 

 

 

マイケル「了解しました。何人前頼んだのですか?」

 

 

 

社長「XLサイズを150枚頼んだ。」

 

 

 

マイケル「え!?」

 

 

と、驚くと同時に宅配バイクではなく、クロネコヤマトクール宅急便のトラックと同サイズのトラックが休憩室前の空き地に入ってくるのが見えた。

 

 

 

中身は勿論ピザである。

 

 

次々と運ばれてくるピザ。

 

 

もうなんというか匂いとかがエグイ。が、休む間もなくセッティングを行っていく。

 

 

 

社長「よし、マイケル。皆列を作ってピザを受け取りに来るから配っていってやってくれ。配り終わったら私から簡単な挨拶をする。その後お前が挨拶をするんだ」

 

 

マイケル「了解です。なんか考えておきます。」

 

 

そうこうしているとお昼休憩の時間となった。次々と入ってくる屈強なワーカーたちにピザを配る。

 

 

配り終えた後、社長がにらみを利かせていたからか皆おとなしく席に座り、社長が話すのを待つ。

 

 

全員座り終えたのを確認し、社長が話し始める。

 

 

社長「皆!お疲れさまだ。皆知っての通り今日はマイケルの出社最終日だ。マイケルが皆に感謝の気持ちを示したいという事でこれだけのピザを用意してくれた。マイケルのおごりだから皆礼を言うように!また、これからマイケルのスピーチがあるが、最後にマイケルから最も頑張っていた従業員、MVPを発表してもらう。それではマイケルどうぞ!」

 

 

 

あのー…わずか1分くらいに新情報を盛り込みすぎじゃないですかね??

 

 

 

いや、まず今日最終出社日なの!?あ、明日は!?

 

 

 

あとピザ!!これ何、僕のおごりなの!?

 

 

 

あとMVPって何!?え、なにを基準に選ぶの!?

 

 

 

 

 

マイケル「えー、皆さま短い間でしたがありがとうございました。今回の経験は私にとって…」

 

 

 

とりあえずすべての疑問を飲み込み話し始めることにした。

 

 

マイケル「…であるからして~…(とりあえず最終出社日かどうかはあとで確認しよう。この際どっちでもいいや。ピザはたぶん会社に言えば後で払ってくれる…よなー…?問題はMVPかー…うーん…どうしたものか…)」

 

 

 

頭をフル回転しながらっぽいことをひたすら話す。

 

 

マイケル「では、最後にMVPを発表します。MVPは…」

 

 

人事のおばちゃん、ジョッシュ、ロビン、シャワーの事を教えてくれたじいさん、ジョジョ、サンディングのリーダー、スティーブ、ケビン、ハリー(改)、チャド、アントニー、ゴーストバスターのおばちゃん、その他工場で働いているスタッフたち。お世話になった人達の顔が次々と浮かんでいく。そんな中一人の顔が色濃く浮かび上がった。

 

 

 

 

マイケルは「MVPはチャドです!!」

 

 

 

皆「うおおおおおおおおお!!!!!」

 

 

 

湧き上がる室内。ふとチャドの顔を見ると心なしか少し顔に生気が戻った気がする。良かったよかった。

 

 

 

社長「マイケル。ちなみに授賞理由はなんだい?」

 

 

 

マイケル「え!?え、えーと、なんというか・・・戦士・・・だから?」

 

 

 

心なしかチャドの顔から生気がまた無くなって行った気がした。

 

 

 

 

 

 

 

パーティ後僕は社長のもとに行き、もう一つの疑問をぶつけた。

 

 

 

マイケル「社長、すいません僕最終日明日だと思うのですけど・・・?」

 

 

 

社長「あー、それだがな。実は作業日程的に明日はほとんどの工程が動かないことになって一部の工程を除いて休みになったんだ。だから今日が最終日だ。明日はオフでいい。もし観光とかに行きたいなら行けばいい。なんなら会社に言って口裏合わせ手もいいぞ?」

 

 

 

マイケル「ほ、本当ですか!?じ、じゃあ…」

 

 

 

ここでふと思い出す。

 

 

 

先週の土日を。

 

 

 

 

何をしたか。(できなかったか)

 

 

 

何があったか。(なかったか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…うん、やること…ないな!

 

 

 

マイケル「…いえ、やはりまだまだ勉強したいので明日も出社させてください…。」

 

 

 

社長「そ、そうか…まぁ、好きにしてくれ。私は明日は出社しないからな・・・お疲れさま!!」

 

 

マイケル「お疲れ様でした・・・。」

 

 

 

 

11日目:

 

 

誰もいない工場で1日中ひたすら写真を撮りまくったとさ。

 

 

 

おわり。

 

 

汗と涙とファイバーグラスの工場編パート3

4日目:

 

 

 

今日を乗り切れば休み…その事実だけが僕を奮い立たせていた。

 

 

 

 

もはや慣れてきた工場の臭い。しかし、心地よさはない。

 

 

 

 

人事部「今日は午前中はセットアップ、午後はリペアの工程をやってもらいます。」

 

 

 

セットアップとは船底に給油タンクやポンプを仕込んだりする行程で、人が実際に乗る所を取り付けるまでにやらなくてはいけない作業を行う。リペアは塗装を終えた船の塗装のムラなどをチェックし、修正する工程である。

 

 

 

 

人事部「それではさっそくセットアップの所に行きましょう。スティーブ!!マイケルよ!!」

 

 

 

 

スティーブ「よろしく」

 

 

 

僕「よろしくお願いします。」

 

 

 

 

 

スティーブ「そうだな…とりあえず今からやることを見ておいてくれ」

 

 

 

 

 

僕「わかりました。」

 

 

 

 

なんというか職人っぽいというか、やはりまずは見て真似よという事でしょうね。

 

 

 

 

~30分後~

 

 

 

 

チュイーーーーーーーーーーン

 

 

 

僕「…」

 

 

 

 

 

~1時間後~

 

 

 

 

チュイーーーーーーーーーーン

 

 

 

 

僕「…」

 

 

 

 

飽きた。ひたすらこう、スティーブさんがドリルで穴を開けたりするのを見てたんですけど、まさに穴が開くくらい見たというか。もうスティーブさんにもそろそろ開くんじゃないかな?みたいな。

 

 

 

 

そんなとき、スティーブさんに異変が訪れた。

 

 

 

 

ガガガガガ…!

 

 

 

 

 

スティーブさん「ちっ・・・!」

 

 

 

 

どうやらドリルで穴がうまく開かなくなったようだ。

 

 

 

 

よく確認するとドリルの歯がだいぶボロボロ…無理もない。

 

 

 

 

 

スティーブさん「まいったな・・・今手持ちのドリルはこれしかない。こいつで頑張るしかないな!!」

 

 

 

 

チュイ…ガガガガガ…!

 

 

 

 

じーーーーっ(見てます…!見てますよ、スティーブさん…!)

 

 

 

 

 

~1時間後~

 

 

 

 

 

ガガガガガ…!ガコン…!

 

 

 

 

 

スティーブさん・僕「!!!!」

 

 

 

 

急いで船を確認するとそこには綺麗な穴が開いていた。

 

 

 

 

 

スティーブさん・僕「FOOOOOOOO!!!」

 

 

 

 

思わず二人でハイタッチ。二人の仕事人が何かを成し遂げた瞬間だった。

 

 

 

 

 

僕「・・・という事があったのさ!」

 

 

 

 

ロビン「マイケル。お前何にもやってねえじゃねえか」

 

 

 

 

ですよねー。

 

 

 

 

 

午後からはスティーブさんとは別れ、リペア工程へ向かう。

 

 

 

 

僕「すいません、午後からこちらで作業することになってるのですが・・・?」

 

 

 

 

おじさん「おお、来たか。じゃああそこにいるケビンについてくれ。ケビン!!マイケルだ!!」

 

 

 

 

ケビン「よろしく。」

 

 

 

 

…いや、もうね。まずケビンを見て思ったのがね。もう、プリズンブレイクか!って。

 

 

 

 

 

f:id:michaelalexander:20161023150504j:plain

参考図:プリズンブレイクの主人公マイケル。同じマイケルなのに僕の150倍くらい賢い設定。

 

 

 

 

 

タトゥーが…タトゥーがすごいことになってる。いや、もう正直プリズンブレイクよりもすごい。なんかもう耳とか鼻とかもすごいめっちゃ細かい柄が入っていて、プリズンブレイクのタトゥーが脱獄計画の詳細を記しているんだったら、ケビンのタトゥーは地球滅亡計画の詳細くらい記されてないと割に合わない。

 

 

 

 

 

そんなケビンだが普通に優しく仕事を教えてくれる。

 

 

 

 

船の塗装は形も複雑であるためか、結構ムラが多く、修正個所が多い。その修正個所をライトや手で触って確認して、修正が必要な個所にしるしをつけていき、しるしのある所はコンパウンドややすり、研磨機、薬品等を使って修正していく。サイズも大きい為、4,5人で作業していく。

 

 

 

 

僕はかつて車のディーラーで働いていたとき、お客さんに「どっかで擦った傷やと思うねんけどなんとか消えへんかなー」って言われ、コンパウンドでうまく消したところ、「あなた…もしかして魔法使いですか…?」と言われた過去がある。コンパウンドの扱いには心得があるのだ。また、日本の工場では塗装課で働いていたので検査の工程では無かったが、塗装のムラなどのチェックも作業中行っていた。

 

 

 

 

初めて過去の経験が活きる工程にきたなー。と思いながら順調に仕事をこなした。

 

 

 

 

ケビンのタトゥーがすごい以外は特に事件もなくこの工程は終了。ここからオクラホマでの初めての休日を過ごすことになる。

 

 

 

 

5日目:

 

 

早朝に起床。僕はワクワクしながら身支度し、オクラホマで一番栄えているオクラホマシティへと向かった。

 

 

 

事前にオクラホマシティの観光地を調べてみたが、特に何もでない。

 

 

 

とりあえず行けば何かあるだろう。そう思いながら車に乗り込んだ。

 

 

 

車を走らせること1時間半。

 

 

 

オクラホマシティに到着。

 

 

 

周囲を散策する。

 

 

 

 

 

 

んーなるほど!なるほどなるほど!

 

 

 

 

 

~1時間後~

 

 

 

 

よし、帰るか!!

 

 

 

いや、僕のね!事前の下調べが不十分だったのかもしれない。でも帰ろう。。。って。そうなりました。

 

 

 

 

 

6日目:

 

 

 

起床。昨日の事を思い出し、僕は静かにパソコンを立ち上げ仕事をするのであった。

 

 

 

 

つづく

汗と涙とファイバーグラスの工場編パート2

前回までのあらすじ。

 

 

ファイバーグラス超痛え。

 

 

 

 

 

 

 

二日目:

 

 

 

工場員の朝は早い。

 

 

 

 

午前5時に起床。たかが2時間の時差。されど2時間の時差。実質午前3時に起きたことになる。

 

 

 

つ、つらい。

 

 

 

工場は朝の6時からスタートする。これは日の出る前に乾かさなければならない作業を済ませてしまうためである。

 

 

 

現代っ子の僕にはなんともつらいスケジュールである。

 

 

 

適当に朝ご飯をつまみ、作業服に着替え工場へと車で向かった。

 

 

 

工場独特のなんとも言えぬ匂いに出迎えられつつ、僕は人事部のおばちゃんの元へ向かった。

 

 

 

僕 「おはようございます。本日はどちらの工程へ向かえば…?」

 

 

 

人事部 「今日もファイバーグラスを塗りたくって!」

 

 

 

 

…え?また?

 

 

 

 

どうやら今日は船の別のところを塗りたくるらしい。

 

 

 

 

なんだかなーと思いながらてくてくついていった。

 

 

 

 

人事部「 さぁ、着いたわ。今日はここで一日作業してもらいます。ここのチームリーダーを紹介するわね。ジョジョ!こっちきて、今日ここで一日働くマイケルよ!」

 

 

 

 

き、き、き、きたあああああああ!!

 

 

 

 

ついに!ついに憧れのジョジョに会うことができました!まさかオクラホマにいたとは…。

 

 

 

 

 

ジョナサン・ジョースターなのか。ジョセフ・ジョースターなのか。はたまた、逆に空条・ジョリーンなのか。わくわくしながらジョジョの登場を待った。

 

 

f:id:michaelalexander:20161020095607p:plain

 

参考図:ジョナサン・ジョースタージョジョの奇妙な冒険第一部ファントムブラッドの主人公。

 

 

f:id:michaelalexander:20161020095538j:plain

参考図:ジョセフ・ジョースタージョジョの奇妙な冒険第二部戦闘潮流の主人公

 

 

f:id:michaelalexander:20161020095525j:plain

参考図:空条・ジョリーン。ジョジョの奇妙な冒険第六部ストーンオーシャンの主人公。

 

 

 

 

 

 

ジョジョ「お前がマイケルか!よろしくな!ペッ!おっとすまねえ!唾を吐くのは…そう、癖。癖なんだ。決して悪気があったわけじゃあないんだぜ。へへへ」

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、もう何この人。ジョジョっていうかヨーヨーマッのスタンドですよね?

 

 

 

 

f:id:michaelalexander:20161020095549j:plain

 

参考図:ヨーヨーマッ。ジョジョの奇妙な冒険第六部に登場する唾液を使って相手を攻撃する敵スタンド。

 

 

 

 

そんなジョジョ改めヨーヨーマッとその愉快な仲間たちと作業を進めていく。

 

 

 

 

このファイバーグラスを塗りたくるのも2日目。さすがに慣れてくるのかと思いきや、ここのチームは曲線や窪みがやたら多いところを担当しているみたいで難易度が格段に上がる。

 

 

 

 

絶対に作ってはいけないという空気のポケットを無尽蔵に生み出していく。

 

 

 

 

手も足も出ないままお昼休憩へ。

 

 

 

 

だ、だめだ・・・根本的にこの作業が向いていない・・・。しかも暑い・・・。眠い・・・。

 

 

 

???「大変なところに捕まっちまったなァ」

 

 

 

 

僕「こ、この声は!?」

 

 

 

ロビン「あそこは格段に難易度が跳ね上がる。俺は2時間で音を上げた。手をうまく使え。手は自由が利くからなァ。ファイバーグラスを恐れるな。俺はできないが、お前ならひょっとして・・・?」

 

 

 

そう言ってロビンはどこかに去って行った。

 

 

 

 

 

2時間は持たなすぎじゃあ・・・。

 

 

 

 

 

手がかゆくなるのでロビンのアドバイスは華麗に無視しつつ、作業に戻る。

 

 

 

〜終業間際〜

 

 

 

相変わらずなれない作業の最中にチームの一人が僕に話しかけてきた。

 

 

 

 

チームメイト「±Δ§Γ×?」

 

 

 

ん?

 

 

 

僕「ぱーどぅん?」

 

 

 

 

チームメイト「¶ζσρΔ?」

 

 

 

 

ん?

 

 

 

僕「ぱーどぅん?」

 

 

 

 

チームメイト「ЫШλφ!?」

 

 

 

 

いや、ちょっと語尾つよなってるやん。。もうね、薄々ですよ。薄々思ってたんですけどオクラホマ訛りの英語全然聞き取れない。僕本当にリスニングにだけは絶対的自信があって、まぁ、たいがいの訛りも20分すればもう慣れて完璧に聞き取れるんですね。

 

 

 

オクラホマの英語分からん。

 

 

 

全員じゃないんですけど、5人に1人くらいの割合で何言っているか全く分からない人がいるんです。(出身地によっても違うのでしょうか?)

 

 

 

 

この人も全く分からない人の一人なのです。

 

 

 

 

 

僕は意を決して言いました。

 

 

 

僕「プリーズ スピーク スローリー!」

 

 

 

屈辱のセリフ。僕はこの時生まれて初めてこのフレーズを使いました。

 

 

 

 

チームメイト「エ ク ス キュー ズ ミー!!」

 

 

 

 

いやいやいやいやいやいや。絶対すごい難しいこと言ってると思ったら!ま、まさかのエクスキューズミー!?

 

 

 

 

あまりのことに僕が呆然と立ち尽くしていると、

 

 

 

チームメイト「お前、本当に英語話せるのか?」(なぜかこれは一発で聞き取れる)

 

 

 

と屈辱の言葉を浴びせかけられます。

 

 

 

 

く、くそ・・・!こいつ!!と頭にきた僕は、

 

 

 

 

 

┐(。・∀・。)┌さぁ?

 

 

 

 

 

ジェスチャーで返しておきました。

 

 

 

 

 

こうして相変わらずうまくもならないまま、チームメイトともコミュニケーションが満足にとれないまま、2日目を終えました。

 

 

 

 

 

 

三日目:

 

 

 

 

 

相変わらず慣れない。今日もファイバーグラスまみれになります、か。と気合を入れて出勤する。

 

 

 

 

僕「今日はどこにファイバーグラスを塗ればいいのですか?」

 

 

 

 

 

人事「今日からもう塗らなくて大丈夫です、次のステップ、サンディングに行きましょう。」

 

 

 

 

 

ひゃっほーーーーーーーーう!おさらばだーーーーーい!

 

 

 

 

僕が心の中でガッツポーズをしている中ある不穏な声を聴きとってしまう。

 

 

 

 

「あいつ、気の毒に・・・」

 

 

 

 

え?

 

 

 

 

 

人事「じゃあこれをつけて」

 

 

 

スッと耳栓とデジモンの歴代主人公が付けているゴーグルみたいなのを渡される。

 

 

 

 

 

僕「こ、これは?」

 

 

 

人事「耳栓とゴーグルです。次の工程ではこれが必須なのでつけて作業してください。」

 

 

 

僕「わかりました」

 

 

 

 

人事「それではあそこの部屋が作業場です。私は入らないのでここでお別れです。頑張ってください」

 

 

 

嫌な予感がしつつも、耳栓とゴーグルを着用し、言われた作業場に入る。

 

 

 

 

 

 

 

チュイーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

いや、もう早速うるせえ。このうるさいドリル音を掻き分け、リーダーらしき人に声をかける。

 

 

 

 

僕「あの、すいません、ここで今日働くマイケルです。」

 

 

 

 

 

リーダー「来たか!!俺の名h(チュイーーーーーーーーーーン)…っそくじゃあそこで作業を始めてくれ。」

 

 

 

 

いや、もう全然分からん。ほぼチュイーーーーーーーーーーンしか聞こえん。リーダー=チュイーン。作業=チュイーンですもん。

 

 

 

 

とりあえず渡された工具から察するに、ボートに目印を付けたところにホースやコード類を通すための穴をドリルで開けていくらしい。

 

 

 

 

 

僕は早速ドリル片手に作業を始めた。ボートにドリルを当てる。スイッチを入れる。手がはじかれる。

 

 

 

???

 

 

 

 

もう一度やってみる。

 

 

 

 

ボートにドリルを当てる。スイッチを入れる。手がはじかれる。

 

 

 

 

 

はいはいはい。ズバリあれね。力負けしてる、と。

 

 

 

 

 

いや、なんというかビビっている。ドリルというものにビビって逃げ腰になっている。穴を開けちゃいけないところに穴を開けたらどうしよう。そんな不安が僕を安定志向に走らせ、思い切った動きを取らせてくれない。

 

 

 

 

 

リーダー「おい、何してんだ!?とっとと穴を開けていけ!!!!」

 

 

 

 

 

僕「は、ははははい!!!!」

 

 

 

 

ガガガガ、チュイーーーーーーーーーーン!!

 

 

 

 

なんというか・・・ドリルって・・・勢いですね。

 

 

 

 

不安という感情を失った僕はドリルマシーンとして順調にドリルで穴を開けていく。

 

 

 

というかこんなにあけていいの?ダルメシアンの模様くらい穴をたくさん開けていく。

 

 

 

しばらく調子に乗って穴を開けていると、普段使わない筋肉が強張ったのか自分の動きが鈍くなっていくことに気が付いた。

 

 

 

ダメだ、このままでは手が死んでしまう。。

 

 

 

僕はゆーーーっくり作業ペースを緩めた。

 

 

 

 

するとチームリーダーが両手で何かを折るジェスチャーをしながらすごい勢いで僕のもとに向かってくる。

 

 

 

 

え、なに?ば、ばれた!?しかも何そのジェスチャー!?てめぇの体チューペットみたいに二つに折ってやろうかってこと!?

 

 

 

僕「すすすすす、すいませんでし…」

 

 

 

チームリーダー「新入り、ブレイク(休憩)タイムだ。」

 

 

 

 

え、なに?ブレイク(壊す)とブレイク(休憩)が掛かってるってこと?あ、焦ったー・・・。ここの作業場ではチュイーーーーンの音のせいでこういう風な合図でやり取りをしているらしい。

 

 

 

 

その他にも船をドンと叩いて相手にこっちを向かせる通称:船ドンなどが存在する。

 

 

 

 

休憩時間。

 

 

 

僕は休憩室で普段通り休憩を取っていたが、何やらいつもより視線を感じる。

 

 

 

なんでだろう?という疑問は彼が説明してくれた。

 

 

 

 

ロビン「マイケル、とんでもない所に飛ばされちまったなァ。お前がいるサンディングは暑い、耳に悪い、目に悪い、肺に悪い、作業がきついというこの工場誰しもが認める一番のハズレ工程だ。そこをやらせるとはお前の会社は正気じゃあない。見捨てられちまった可能性があるなァ…。悪いことは言わない。身支度の準備をしな。」

 

 

 

 

なるほど、通りで・・・。

 

 

 

会社に見捨てられたらしい僕だが、まぁ、帰るわけにもいかないので作業場へ戻った。

 

 

 

 

しかし、なんでしょうね。ドリルさばきはなんだかんだ結構上達して、スムーズに作業ができるようになりましてね。まぁ、昨日までのファイバーグラスよりは気持ち的にマシかな、って。

 

 

 

穴を開けなくていい所に何回か穴をあけた気もするけれど、ドリルさばきという謎のスキルを身につけ、3日目は無事に終わりましたとさ。

 

 

 

 

つづく。

 

 

 

  

汗と涙とファイバーグラスの工場編パート1

カキーーーン!!

 

 

 

青空に向かって白球を打ち、「いやー、なんとか来週には間に合いそうですね。」と僕は安どの気持ちを織り交ぜつつ先輩に言った。

 

 

 

そう、この日は南カリフォルニアの日本企業対抗ソフトボール大会的なものに向けてソフトボールの練習をしていた。

 

 

 

初めこそまったくフライやゴロが取れず、しかも打てないし、走れないという粗大ごみだった僕も練習を重ね、資源ごみくらいにはなっていた。

 

 

 

ライバル会社も複数参加企業リストに入っている。

 

 

 

負けるわけにはいかない!うおおおお、やってやるぞおおおお!!

 

 

 

大リーグ挑戦編 開幕!!

 

 

~練習後~

 

 

練習を一通り終えて、道具を返すために会社に戻った。

 

 

ごそごそと道具をしまっていたら一緒にいた上司に何やらメールが来たようでそのままメールを読み、内容を確認し、静そしてかに笑った。

 

 

なんだろうな、と思いながら引き続き道具をしまっていたら上司が口を開いた。

 

 

上司「マイケル。ボートについて学びたいって言ってたやんな??」

 

 

僕「あ、はい。そうですね、まだまだ僕も未熟ですから。」

 

 

上司「例の件、来週から行けるみたいやで?」

 

 

僕「例の件…?はっ!!ま、まさか!!!」

 

 

上司「マイケル、来週から船会社の工場に出向や!!」

 

 

僕「な、なんだってーーー!!というかソフトボールは??」

 

 

上司「(ニコッ)」

 

 

僕「(ニコッ、ですよねー)」

 

 

大リーグ挑戦編 完!!

 

 

 

 

 

この一件からわずか6日後、気づいたらオクラホマという州に来ていた。州都はオクラホマシティ。そこから車走らせること約一時間。なんというかあまり何もない街にやってきた。

 

 

「いろいろあるぞー?マクドナルドとか、ケンタッキーとか。ま、いろいろあるぞ!」と行く前に僕に語ったアメリカ人の同僚。

 

 

彼の言葉に嘘はなかった。

 

 

いろいろあるぞー?サブウェイとか、タコベルとか。

 

 

 

まぁ、そんな何もない街についた日は夜も遅かったのでそのままホテルに泊まり、翌日に備えた。

 

 

 

工場1日目:

 

7時半起床。カリフォルニアとは時差が2時間あり、実質5時半に起床。正直眠い。

 

 

「めっちゃ汚れるからこれを持っていけ。向こうで捨ててきてもいいから(ニヤニヤ)」と渡されたTシャツを着て船工場に向かった。

 

 

工場はホテルから車で約5分。

 

 

 

着くとそこにはなんとも例えづらいくらいの大きさの工場が建っていた。(野球場くらいかな?)

 

 

 

正面玄関から入り、受付のお姉さんに今日からしばらくこちらで働かせてもらう者であるという旨を伝え、担当の方を呼んでもらった。

 

 

 

待つこと5分。

 

 

人事のおばちゃんが出てきた。

 

 

 

人事「ようこそ。では早速説明に入ります。まず施設内での携帯電話の使用は禁止です。すみませんが、ここで働いてもらう以上従っていただきます。」

 

 

 

ポケモンGOできんやんけ・・・。

 

 

人事「次に出社時間ですが、今日は大丈夫ですが、明日からは6時に出社してください。」

 

 

僕「Oh, PM?」

 

 

人事「No, AM」

 

 

 

え、早すぎない?カリフォルニア時間だと実質4時に出社やん?

 

 

人事「休憩時間は8時前後に10分、2時前後に10分。そして11時付近にお昼休憩で30分です。」

 

 

 

え、お昼短すぎない?え、お昼買いに行けなくね?

 

 

 

人事「今日のお昼はなんとかして用意しておきます。」

 

 

 

僕「わ、わかりました。」

 

 

 

人事「まぁ、とりあえずはそんな感じです。毎日違った行程を回ってもらうのでその都度言います。工場の作業大丈夫そうですか?」

 

 

僕「昔日本の工場で働いていたことがあるので任せて下さい!」

 

 

 

そう、僕は新人研修のとき日本の工場で2か月半(くらいだったかな?)働いていたのでまぁ、2週間くらい大丈夫だろう。ましてや僕はかなりきつい行程に配属されていたのであれと比べたら全然余裕だろう、と。

 

 

 

この時はね、そう思っていました。

 

 

人事の人に連れられて歩いてすぐ。小さな扉の前で一瞬止まった。

 

 

 

人事「この扉の先が工場です、準備はいいですか?」

 

 

 

僕「大丈夫です!」

 

 

人事「OK,HERE WE GO!!」

 

 

扉を開けるとまず様々な音が同時に飛び込んできた。

 

 

「チュイイイイイイイイン!!!」

 

 

「ウィーーーン!!!!」

 

 

「カンカンカン!!!!」

 

 

「HEY♪YO♪マザーフ〇ッカー♪(謎のヒップホップ大音量)」

 

 

 

え?

 

 

いや、最初の方はうん。なんか結構聞き覚えある感じの音。こう、なんというか工場ですよね。

 

 

え、なんか聞き間違い?今マザーフ〇ッカーって言ってなかった?

 

 

そしてすぐさま周囲を見渡した。

 

 

まずね、怖い。もうみんなタトゥーを入れてる。

 

 

しかもどれも結構でかい。腕全体にかけてこう入れてあったりとか。

 

 

もう誰も彼もが邪王炎殺黒龍破撃てそうなんですよ。

 

 

 

f:id:michaelalexander:20161004113819j:plain

イメージ図

 

 

あとアジア人が全くいないんですね。圧倒的アウェー感。

 

 

 

後で知ったのですがオクラホマはアジア人の割合がかなり低いみたいで、マジで工場で僕一人だけでした。

 

 

大丈夫かな・・・

 

 

そんな不安の中、最初の工程へと案内された。

 

 

 

人事「ここがラミネーション行程です。ここからスタートしましょう。紹介します、ここのチームリーダーのジョッシュです。」

 

 

ジョッシュ「よろしく」

 

 

僕「よろしくお願いします。」

 

 

ジョッシュ「じゃあとりあえず僕のやることを見ててくれ。」

 

 

僕「はい。」

 

 

そういうとジョッシュは船のハルという平たく言うと船体?のベースとなっているであろう巨大なものにペタペタとファイバーグラスのシートを張り付け、細かいファイバーグラスをスプレーガンで吹き付け、専用の糊で塗りたくってシートを固定していく。これを毎回不要な糊をヘラで落としながらひたすら繰り返して層を厚くしていく。

 

 

f:id:michaelalexander:20161004113833p:plain

 

 

かなり簡略化したハルの参考図。

 

ジョッシュ「どうだできそうか?」

 

 

僕「やってみます。」

 

 

べちょーん。うまくいかない。

 

 

ジョッシュ「ははは、まぁ、難しいだろうな。こいつなんて何年もやってるが全然できないからなぁ!」

 

 

そう言いながら部下を紹介する。

 

 

「へへへ、すいやせん・・・!紹介が遅れたな、新人。俺の名前はクリス。だがまぁ、ロビンって呼んでくれ。」

 

 

クリスでなんでロビン?とはちょっと思った。

 

 

 

このロビンとやら。ジョッシュが推定30台前半とすると年齢は恐らく40代前半と推測する。

 

 

 

アメリカの実力主義が垣間見えた。

 

 

 

そうこうするうちに遅れて参加した分早速昼休憩に入った。

 

 

 

僕は直接休憩所には行かず人事の人の元へ行き、お昼をせびりにいった。

 

 

 

人事「マイケル、お昼を用意しておいたわ。これを食べなさい。(スッ)」

 

 

 

マルちゃんのカップ麺だった。。。

 

 

 

あざっすと言いながらどさくさにまぎれて二個取り、休憩所へ行った。

 

 

 

しかしここでハプニングが発生する。

 

 

お湯を沸かすものが見当たらない。あるのは水道水だけ。

 

 

 

え、どうしよう。困った。

 

 

誰かに聞こうかとあたりを見渡したらロビンがいた。

 

 

僕「ロビン、ここって何かお湯を沸かす機械ない?」

 

 

 

ロビン「おいおい、マイケル。どこに目をつけてるんだ。そこにあるだろ?」

 

 

 

ロビンが指さす方を見ると電子レンジがあった。

 

 

僕「え?」

 

 

ロビン「おいおい分からないのか?水を入れてチンするんだよ。それで出来上がりさ、簡単だろ?」

 

 

マジでか。。。

 

 

僕は言われるがまま水道水をカップ麺に注ぎレンジに入れる。

 

 

 

しかし、ここで第二の罠が発動する。

 

 

水がくさい。

 

 

もうなんというかくさい。このままレンチンしても絶対うまくいかない。

 

 

 

そんな予感をしつつ、レンチンへ。

 

 

 

待つこと3分。一応物は出来上がる。

 

 

 

さて、それではさっそく・・・!フォークで麺をすくい口に含む。

 

 

ん!!これは・・・!

 

 

従来とは違う手法で調理したことにより麺がバリカタを通り越してハリガネ状態となり、触感にアクセントを加えている!また、くさい水で溶いたスープが面妖な臭いを放ち、鼻孔をくすぐる。

 

 

 

まずい。

 

 

 

僕はそのまま静かに二個目のカップ麺をかばんにしまった。

 

 

 

そして30分の休憩はあっという間に終わり、職場に戻った。

 

 

職場に戻ると人事のおばちゃんが僕のことを待ち受けていた。

 

 

人事「マイケル、次の工程に行くよ!」

 

 

よっしゃ、次はどんなところだろう。とりあえず今の作業には早速飽きたので期待に胸を膨らませ、人事についていく。

 

 

ついていくこと3秒。

 

 

人事「はい、次はここです。」

 

 

僕「え・・・」

 

 

先ほどまでの工程の隣に移っただけだった。

 

 

ま、まさか・・・

 

 

人事「はい、今度は船体じゃなくて、船体の上の部分です。同じような作業をしてくださいね。」

 

 

僕「」

 

 

 

もぅほとんど同じ面子で作業を進める。というか先ほどまでとの違いが分からない。

 

 

死んだ目をしながら作業を進めること2時間半。ようやく10分休憩に入る。

 

 

休憩所に移動する。

 

 

だ、脱走したい・・・。

 

 

???「おいおい、しけた面してるなー?」

 

 

僕「こ、この声は?」

 

 

ロビン「どうだー?新しい職場は?あそこは初めの所と同じのように見えてまるで違う。俺は10日ともたなかった。お前は何日持つかな?楽しみにしてるぜー」

 

 

そう口にし、どっか去って行った。

 

 

(あいつなんやねん・・・)

 

 

そう思いながら静かに職場に戻った。

 

 

 

ラスト2時間の作業。ここで異変が起きる。

 

 

腕が…いたかゆい。

 

 

そう、ファイバーグラスは刺さると痛いのだ。

 

 

今そのファイバーグラスをもうマーガリンみたいに塗りたくっているといっても過言ではない。

 

 

なんというか日焼けとかの痛みに近い。ぎりぎり我慢できない感じ。

 

 

そんな僕の様子を見てひとりのおじいちゃん作業員が僕に話しかけてきた。

 

 

おじいさん「お前さん、帰ったらあつーーーーいシャワーを浴びなさい。熱いシャワーが毛穴を開き、ファイバーグラスを落としやすくしてくれるのじゃ。フォフォフォ。」

 

 

そう言い残してどっかに行った。

 

 

 

ナイスアドバイス!おじいさんさすがキャリアを積んでいるだけある。

 

 

 

???「待ちな、マイケル」

 

 

こ、この声は!?

 

 

 

ロビン「ヤツの言っていたことに惑わされるなぁ。帰ったらつめたーーーーーいシャワーを浴びろぉ。冷たいシャワーが肌の感覚を麻痺させ、痛みを和らげるんだぁ。」

 

 

 

ロビンはそれだけ言い残して去って行った。

 

 

 

…いや、結局どっちなん?

 

 

 

結局どちらが良いか分からないまま。初日の作業が終わった。

 

 

作業終了後僕は足早にホテルへと向かい、汗とファイバーグラスまみれの体を洗うべく、服を脱ぎ捨てバスルームへと向かった。

 

 

 

さて、ここからが問題だ。おじいさんの意見を取るか、はたまたロビンの意見を取るか。

 

 

 

 

迷った末、やはり亀の甲より年の劫という事でおじいさんの意見を採用し、シャワーの温度をアツアツにし、意を決してバスタブに進入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!

 

 

 

 

え、なにこれ。めっちゃ痛い。もしかして2016年に新たな拷問方法を発見しちゃった?熱いシャワーで傷穴やら毛穴やらを開いたことによってファイバーグラスが自由の身となって暴れまくり、熱いシャワーが傷口を悪戯に痛め、もう例えるならばファイバーグラスの盆踊り。祭りだ祭りだ!ってファイバーグラスが好き勝手にはしゃいでいます。

 

 

 

これはいかんとすぐにバスタブを離れ、シャワーの温度を下げに下げ、急きょロビン案に変更する準備を整えた。

 

 

 

あのじじい明日覚えておけよ・・・と再びバスタブに進入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ANGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!

 

 

 

あれ?2016年に早くも2個目の拷問方法発見?先ほどの痛みが動の痛みだとしたらこちらは静の痛み。開いていた各穴を冷たい水によってキュッと締め上げ、その動きがファイバーグラスの肌への侵入を助長した。また、冷たい水がボロボロの肌にスコールのように強く打ち付け、刺激を与えてくる。痛い。

 

 

僕はすかさずバスタブから離れ、床に四つん這いになって痛みに耐えた。5分ほど。

 

 

 

僕もまだまだ若いと自負していてこの先何十年と生きる予定ですが、恐らくですよ?この先含めた人生トップ3に入る屈辱的な格好をしていたと思います。

 

 

 

「まだ初日、なのか・・・。」思わずそうつぶやき、初日を終えた。

 

つづく 

VS.DMV その2

トラブルに巻き込まれた前回の試験から約1週間。なんとか筆記試験合格をつかみ、実技試験へと駒を進めた。

 

 

実技試験では実際の道路で運転し、右左折や走行スピード、目視の有無や、運転席回りの装置の名称の確認、市街地での駐車やバックの技術などを問われる。コースはその時の試験官の気分次第で変わる。

 

 

会社の近くの試験場が結構難関ということで、念には念を入れて土日にポケモンGOに勤しみたいのをぐっと堪えて実際の試験場に赴き練習した。

 

 

そして昨日本番を迎えることになった。

 

 

一緒に来た先輩(免許保持者が一緒に来ないといけない)から「君に受かってほしいという気持ちと落ちてほしいという気持ちが今ちょうど50:50。」という熱い激励を受け、いざ試験へ。

 

 

受付を済ませ、車の中で待機しているとアジア系のおっさんの試験官がやってきた。

 

 

試験官「じゃあまずライトの確認から。」

 

 

一連の車の動作の確認作業をやっていき、終えると助手席に乗り込んでくる。

 

 

試験官「それでは発進してください。」

 

 

賽は投げられた。

 

 

僕はまずゆっくり発進し、公道に入る手前で一旦停止。一方通行の道路なので右折のウィンカーを出しつつ、目視で周囲を確認。左から絶妙な位置で車が走っていたので待機した。すると、

 

 

試験官「何をやってるんだ!今の行けるだろ!ここはカリフォルニアだ!ちゃきちゃき運転しないとやられるぞ!!」

 

 

僕「ヒェ・・・」

 

 

試験官「ほらー車がどんどんくるー!!さっきのが完璧なタイミングだったんだ!」

 

 

僕「す、すいません。」

 

 

 

考えうる最低のスタートを切った。

 

 

しばらく走らせると住宅街へ突入。住宅街では歩行者に気を付けているか。右左折がきちんとできているか。そして駐車技術とバックの技術の確認が行われる。

 

 

「ほかの車が停止線で止まらず走るかもしれない。」「歩行者が急に飛び出すかもしれない。」「ヒュンダイを知らないのは日本だけかもしれない。」あらゆるかもしれない運転を想定して走るもことごとく試験官に「遅い」と否定される。

 

 

しまいには試験官からの指示も「はい次左」「はい右」「あ、あ、今の所右!はい、うまく曲がれなかったー減点―。」と段々雑になる。

 

 

こんな感じで雑になると落ちている可能性が非常に高いらしい。

 

 

(あー、やばいな。でもまだたぶん大丈夫なはず・・・!)

 

 

 

試験官「はい、じゃあ市街地抜けようか」

 

 

えええええええ!!!ち、ち、駐車は!?バックは!?

 

 

 

もうね、こんな感じに何か重要な項目をすっとばされるとだいたい落ちているパターン。

 

 

そのまま試験場へとぼとぼと帰って行った。

 

 

試験場へ戻ると試験官による振り返りと採点、そして結果発表が行われる。

 

 

試験官「いいか!この国には優先権があるんだ!優先権があれば堂々と走る!お前は注意をしすぎだ!ここは改善する必要がある!他の所だとな・・・」

 

 

試験官「・・・」

 

 

???

 

 

試験官のペンが止まる。ん?なんだろうと恐る恐る採点シート覗くと、

 

 

 

バック、駐車の項目だった。

 

 

試験官「・・・。」 

 

 

僕「・・・。」

 

 

 

試験官「いいか、交通ルールを守らないやつはクズだ。だが、歩行者を守らないヤツはそれ以上のクズだ。というわけでお前は合格だ。28番の窓口に行って免許証をもらってきなさい。」

 

 

こ、こいつ!試験項目を忘れたくせに、なに鈴取り合戦の時のカカシ先生みたいなこと言ってんねん!!

 

 

と思いつつもまぁ、合格なんで特に文句も言わず、無事免許証をゲットしましたとさ。

 

 

 

なんというかまぁ、筆記試験の時からですが、全体的に腑に落ちなかったです。